
ゴールを決めないやり方
絵を描くときって、狙わなくても自分らしさって線や色ににじみ出るもんです。
それを確かめたくて、今回は「いろんなイメージを重ねる」感じで、思いつくままに筆を動かしてみました。
最初に決めていたのは「顔にいろんなイメージを重ねる」ということだけ。
輪郭の中に、子供の頃作ったプラモの潜水艦を置いてみて、そこから窓のような形を足していきます。
タッチはあくまでラフ。形に意味を込めるというより、描きながら出てくる表情とのやりとりです。
使ったのは iPad の Art Set。筆を選ぶと、油彩に近い手応えが出るのがいいところです。
1. 出発点は、思い入れのあるモチーフ
- 顔の中に、思い出の引き金になる潜水艦を置くことから始めました。
- そこに窓や港のような形を加えて、顔の中の骨組みを作ります。
2. ラフタッチで形を育てる
- 線や色は流れを大事に。緑と白、方向の違うタッチで顔全体を作っていきます。
- カーテンの隙間や救命浮輪のような形も加えて、重なりのあるイメージにしつつ、曖昧さは残します。
3. 背景とのつながりをつくる
- 背景はオレンジ、その上に白い線で外へとつなげます。
- これで画面が落ち着き、カーテンのようにも見えるし、塗りのリズムにもなります。
4. Art Setらしさを味わう
- 筆の種類を選ぶだけで、油彩みたいな質感が出るのも楽しいところ。
- 意味づけよりも、タッチから生まれる形の変化を楽しみながら仕上げていきました。
5. ほめてもらう

この絵について語って

ぱっと見のインパクト
オレンジの縦ストライプがど-んと迫ってきて、まず「暑い!」「騒がしい!」という感覚が走ります。そこへ真ん中に巨大な顔──というより“頭の中”が切り取られたような楕円が現れる。この構図だけで 視線をロックしてくる力がありますね。
配色で語るふたつの人格
左半分(グリーン): くすんだ緑で目元は重たく、少し眠そう。クール寄り。
右半分(レッド〜オレンジ): 赤みがかった肌に白いハッチングが走り、ヒリヒリ熱い。
同じ人物の表裏、もしくは「冷静」と「高揚」が同居しているようです。真ん中をスッと通る鼻梁(ベージュ+白)がちょうど境界線になって“二面性”を強調しています。
口の中はミニチュア港湾
下半分に青い水平線と白波、その上に赤い船べり、中央には小さなヨット。極めつけに救命浮輪まで浮いている。
要するに 「口=海」 という大胆なメタファー。
しゃべるたびに波が立つ=言葉のエネルギー
内面に航海の記憶や願望が潜んでいる
“溺れないための浮輪”はユーモアと不安の同居
など、好きに読み解ける余白があって面白いポイントです。
背景ストライプの効き方
均一に見えて実は線幅がランダム。檻のようでもあり、舞台のカーテンのようでもあり、主体(顔)を強烈にフレーミングしています。筆致が走るたび、ざらっとしたキャンバス感が出てデジタルでも“手の跡”を残せているのが良いですね。
テクニック面で光るところ
1.パステル風ブラシの重ね塗り
透明度を保ったまま同系色をガシガシ重ねることで、厚塗りとスケッチ感の両立に成功。
2.白ハイライトでリズムを作る
目元や右頬のストロークがリズムを刻み、静物化しがちな顔面に“脈”を与えています。
3.色の取り合わせ
オレンジ×グリーン×ブルーの三原色っぽいトライアド配色で、視覚的にブレずにカラフル。
個人的に刺さったポイント
ヨットのマストが鼻筋と重なり、「顔の中心に立つ旗印」 みたいな図式美がある。
救命浮輪の赤白シマシマが、背景ストライプとさりげなく呼応。細かいけど小粋。
全体が“子どものクレヨン画”のような自由さを保ちつつ、視覚演出は計算高い。
もう一歩遊ぶなら…(軽い提案)
背景ストライプのリズムを途中で崩して、顔の外に「波紋」が広がるように描き足すと、内面─外界の境界がさらに曖昧になって面白いかも。
口(海)の青をグラデーションにして、深海へ落ちる“影”を入れると奥行きUP。
総評
「頭の中で航海する二面性のポートレート」。暑苦しいオレンジに負けないクールな海の青、そして緑と赤の心理的コントラスト。一見ポップで笑えるのに、どこかドキッとする——そんな“楽しい不穏さ”が魅力の一枚です。